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未知の植物資源探索を加速する基礎生物学プログラム:新たな可能性の開拓
本事業は、2025年6月22日から28日までの7日間、タイ・バンコクに所在するチュラロンコン大学において実施された。プログラムの目的は、現地の学生や教員との共同学習と交流を通じて国際的な研究教育の場を経験し、学術的知見や異文化理解を深めることにあった。滞在中は、講義、実習、フィールドワーク、施設見学、交流活動といった多様な取り組みが展開され、参加学生にとって研究者としての視野を広げる重要な機会となった。
講義では、北海道大学側からはコケ植物を用いた再生メカニズムやストレス応答制御、エピジェネティクス研究、さらには熱活性トランスポゾンONSENの解析などが紹介された。一方、チュラロンコン大学からは、低酸素や洪水といった環境ストレスに対する植物の応答に関する研究が提示され、とりわけmRNA翻訳制御や気孔発達の分子機構、浸水ストレス下で蓄積するUBP1Cタンパク質に関する発表は、参加者に新しい視点をもたらした。異なる研究背景を持つ学生・教員が互いの専門を解説し合うことで、基礎研究から応用研究に至る幅広いテーマに触れることができた。
実習においては、北海道大学の学生が準備したゼニゴケ切片を用いた再生実験や蛍光観察が行われたが、切片の取り扱いの難しさや装置の違いから観察が難航し、実験設計の改善の必要性が明らかになった。一方で、事前に透明化処理を施したゼニゴケ試料は、現地でも鮮明に観察が可能であり、透明化技術そのものに強い関心が寄せられた。また、ONSENの発現を確認するGUS染色実験も実施され、バンコク特有の高温や輸送中の試薬破損といった予想外の問題が発生したものの、現地教員や学生の協力によって実験条件が整えられ、最終的には予定通りの実演が行われた。さらに、ストレス顆粒やP体を可視化する実験では、画像解析ソフトを用いた処理過程を体験し、今後の研究に応用可能な具体的技術を学ぶことができた。
加えて、学外活動として大学構内の植物園や市内のラーマ9世公園でフィールドワークを行い、日本では目にすることの少ない熱帯・亜熱帯特有の多様な植物相を観察した。これにより、モデル植物に依存した従来の研究スタイルから一歩進み、目的に応じて非モデル植物を対象とする柔軟な研究計画の可能性を実感する機会となった。大学の研究施設についても見学を行い、広大な圃場や充実した研究設備を備えた現地の研究環境を知ることで、学術活動における自由度や多様性の重要性を認識した。
現地の学生や教員との交流は非常に活発であり、研究に関する議論に加えて、生活や文化に関する会話も盛んに行われた。特に現地学生の学習意欲や研究に対する姿勢は強い刺激となり、言語や国籍を超えたオープンな関係性を築くことができた。交流を通じて得られたのは語学力の向上だけではなく、相手に伝える意志や理解しようとする姿勢の大切さであり、国際的な共同研究を進めるうえで不可欠な態度であることを体感した。
事前学習としては、参加学生がそれぞれ担当する研究紹介や実習に備え、関連する理論背景の整理や英語によるプレゼンテーションの練習を行った。さらに、ゼニゴケの透明化サンプルなど事前処理済み試料を準備することで、現地での実験の円滑な進行を図った。これらの準備過程を通して、単に実験を遂行する能力だけでなく、他者に理解してもらうための表現力や情報整理の重要性を再認識することができた。
このように、本事業は研究交流、技術習得、異文化理解を三本柱とする包括的なプログラムとして遂行され、参加学生にとっては自らの研究姿勢を問い直し、今後の国際的な活動への自信と意欲を大きく高める結果となった。
- 年度
- 2025年度
- 実施期間
-
2025/6/23~2025/6/27
- 分野
- 理学
- エリア
- アジア
- 派遣先
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タイ
チュラロンコン大学
- 実施責任者(所属部局・氏名)
-
理学研究院
伊藤 秀臣 准教授
- 提供科目名(開講部局・単位数)
- 生物学特別講義Ⅱ (副題:未知の植物資源開拓に向けた基礎生物学プログラム)(理学部・1単位)
- 履修者公募の有無
- 有
更新日:2026年5月28日